「せっかく安定してるのに、辞めるのはもったいない」
自衛隊を辞めたいと口にしたとき、一番よく言われる言葉だと思います。
私は2021年12月、3等陸曹への昇任を翌月に控えたタイミングで「辞めます」と伝えました。
翌2022年1月に昇任し、3月末で退職しています。
普通に考えれば、損な選択です。
この記事では、なぜ昇任直前でも辞める判断をしたのか、退職を申し出てから3月末までに何が起きたのかを、当時の出来事ベースで整理します。
「昇任や安定を捨ててまで辞めていいのか」と迷っている人の、判断材料になれば嬉しいです。
やまと私は高校を卒業してから4社を歩いてきました。
2021年12月に班長に「辞めます」と伝え、2022年3月末で陸上自衛隊を退職。翌日4月1日にSES企業へ入社しています。
結論:昇任や安定だけで、将来を決めなくていい
先に結論を書きます。
- 昇任は確かにプラス。でも「昇任が来るから」だけを理由に、進路の判断を止めなくていい
- 私の判断軸は「タイミング」ではなく「4年でサイバー大学を卒業できるか」という自分の条件だった
- 短期の損(階級と経験)と長期の選択肢(学位+IT転職)を天秤にかけて、長期側を選んだ
昇任を捨てる選択を勧めたいわけではありません。
ただ、「昇任や安定があるから辞められない」で思考を止めると、自分が本当は何を優先したいのかが見えなくなります。
順番に書いていきます。
2年9か月で3等陸曹に昇任した経緯
2022年1月、3等陸曹に昇任しました。入隊2年9ヶ月での昇任で、当時の最短ペースでした。
昇任そのものに不満があったわけではありません。最短ペースで取りに行ったくらいなので、むしろ真剣に積み上げてきた側です。
3等陸曹昇任までの経緯は、別記事に詳しくまとめています。


昇任辞令の1か月前に退職を申し出た理由
自衛隊を辞めると決めたのは、2021年12月の月初でした。当時の私は自衛隊3年目。
サイバー大学IT総合学部に在籍中で、卒業まであと2年強というタイミングでした。
普通に考えれば、3等陸曹昇任のタイミングで「辞めます」と切り出すのは、損な選択です。



損だってわかってたのに、辞める決断をしたんですか?



そうですね、
自分の中で動かせない条件が1つあったので。
武器学校行きで、4年での卒業計画が崩れると分かった日
武器学校行きの話が見え始めたのは、退職を決める少し前。これで4年での卒業計画が崩れると分かりました。
- 武器学校は数ヶ月にわたる長期教育。その間は一般的な環境で学習ができない前提だった
- サイバー大学は完全オンラインだが、動画講義には2週間の出席認定期間がある
- 第3陸曹教育隊の期間も単位は取っていたが、通常の半分ほど(10単位)まで絞っていて、もう削る余裕がなかった
つまり長期教育に入る=単位取得が遅れるのは、構造的に避けられない計算でした。
このときの学期ごとの単位の取り方は、別記事に詳しくまとめています。


在籍は最大8年まで延ばせる仕組みなので、卒業を先延ばしにすること自体はできました。でも長引けば学費もかさむし、その後のキャリア設計にも響く。4年で取り切るというのが、私の中で動かせない条件でした。
武器学校に行けば、4年での卒業はほぼ不可能。その計算が立った瞬間、辞める準備に入りました。



なんだかリスキーな動き方に見えますね…



そうですね〜
ただ、これは衝動的な決断でも無いんですね。



どういうことですか?



退職の1年以上前から転職エージェントと定期的にやり取りして、「いつ動いてもいい状態」を作っていた。
そこに武器学校の話が来た、という順番です。



なるほど、結構前から自衛隊を辞めた後のことを考えていたんですね!
自衛隊を続ける道と辞める道で、考えたこと
昇任が自動で来ると分かっている局面で、選べる選択肢は2つありました。
- 昇任を受けてから決める。3曹になってから腰を据えて判断する
- 昇任前に動いて、昇任を待たずに辞める
普通は①を選びます。せっかく自動で来る昇任を捨てるのはもったいないし、3曹になってから動いた方が職務経歴書の見栄えも良くなる。
ただ、私にとっての判断軸は「タイミング」ではなく4年でサイバー大学を卒業できるかでした。昇任を待ってから武器学校に行けば、卒業計画は確実に崩れる。①の「待ってから決める」は、目的軸ではむしろ不利だったんです。
短期の損(階級と経験を失う)と、長期の選択肢(4年での学位+IT転職)を天秤にかけて、長期側を選びました。
引き留め面談で言われたこと
2021年12月の月初、班長に退職の意向を伝えました。
切り出した直後に、3社の転職エージェントへ同時に相談を申し込みました。履歴書と職務経歴書を整え、求人の案内をもらって応募を開始。12月末頃には、面接をちらほら受け始めていました。
並行して、12月中だけで、班長から中隊長まで合計6名と、3〜4回ほど面談がありました。
上官からは、決まったように同じことを言われました。
- 「そんな簡単に転職先が見つかるわけがない」
- 「そんなんで辞めて、次の仕事で続くわけがない」



えー
そんなこと言われたんですか💦



言われました笑
上官の言い分もわかるんですけどねぇ



確かに、
未経験から民間ITに動くのは簡単な話ではないでしょうし…



ただ、私はもう動き出していたので、返事はいつも同じでした。
- 「すでに複数のエージェントとやり取りを始めています」
- 「応募も走らせています」
- 「内定をいくつかもらった上で選びます」
内心では呆れられていたと思います。「口先で言っているだけだろう」と、聞き流されていた感覚もありました。



ひょえぇ



ちなみに、
1月に実際に複数の内定を得て「この会社に行きます」と伝えたときの空気は、12月の面談とは明らかに違いましたね笑



実力で黙らせた感じですね笑



なんて言われたか覚えてないですけど笑
年次休暇を取れるだけ取った話
引き留め面談と並行して、もう1つ難航したのが年次休暇の取得でした。
退職までの間に、転職面接・履歴書作成・新居探し・引っ越し準備など、課業時間外には収まらない用事が山ほどありました。
残っている年休を使い切る必要があったのですが、これがそう簡単には通らない。



年休のほうは、すんなり取れたんですか?



これがもっと度胸が要りました。
「ここまで育ててもらった恩はないのか」と言われて。



恩を持ち出されると、断りにくくなりませんか。



なります。
なので「恩義のために年休を取るな、ということですか?」と返したら、「好きにしろ」と言われて。



その一言を取りに行ったんですね。



そうです。
それを盾に小隊陸曹へ出したら「こんな取れるわけないだろ、これで班長はいいと言ったのか」と突き返されましたが、「『好きにしろ』と言われました」で押し通して、取れるだけ取りました。



…部隊からしたら、相当な迷惑なやつですよね(笑)



客観的に見たらヤバいやつです(笑)
退職代行も頭の片隅にはあって、「代行で連絡してくる元隊員より、目の前で交渉する自分のほうがマシでしょう」くらいの感覚でしたね。



自分の人生だから、そこまで振り切ったってことですか。



そうです。
辞めると決めた以上、自分に有利な手で動く。
振り切らないとできないこともある、というのが当時の実感です。
ただ、「辞めると決めた以上、自分にとって有利な手を取る」という覚悟がないと、退職までの数ヶ月で消耗してしまう。
退職直後の動き方を整えるには、退職前の時間が予想以上に必要でした。
1月、大学・転職活動・自衛隊業務を全部詰めた
2022年1月は、思い返してもよく回したな、と自分で感心するくらい詰まった1ヶ月でした。
- サイバー大学の秋学期試験対策(複数科目の最終回〜期末試験)
- 複数のSES・派遣系エージェントの並行面接(最終的にSES企業1社に絞る)
- 自衛隊の駐屯地業務・行事への参加
- 年次休暇の取得・引き継ぎ
1月後半に大学の期末試験が来て、その同じ週に複数SESの最終面接が固まり、最後にSES企業1社へ内定承諾。
並行して駐屯地内では引き継ぎ業務、年休消化、そして引っ越し先の物件探しを始めていました。
2月に入ると、大学の期末試験を片付けながら新居の契約、車の売却、引っ越し準備。
3月は退職挨拶と物品返納、住所変更や各種契約の修正。
そして2022年3月31日に自衛隊を退職、翌4月1日にSES企業へ初出勤、4月4日からサイバー大学の春学期の授業開始。
退職と入社のギャップは1日、入社と大学再開のギャップは3日でした。
後から振り返ると、よくこの密度を1人で回したと思います。
ただ、これは「辞めると決めた12月時点で、辞めた後の動き方を全部設計し終えていた」から組めたスケジュールでもありました。
若手自衛官が進路を決めるときの判断軸
私の判断が正解だったかどうかは、人によって評価が分かれると思います。
ただ、振り返って「これがあったから迷わず決められた」と言えるものは3つあります。
- 動かせない条件を1つに絞る:私の場合は「4年でサイバー大学を卒業する」。条件が1つに絞れていると、昇任のような魅力的な要素が出てきても判断がブレない
- 短期の損と長期の選択肢を分けて比べる:「今もったいないか」ではなく「5年後にどちらの自分でいたいか」で比べる
- 決断の前に「いつ動いてもいい状態」を作っておく:私は退職の1年以上前から転職エージェントとやり取りしていた。準備があったから、武器学校の話が来た瞬間に動けた
逆に言うと、この3つがないまま「昇任前に辞める」のは、ただのギャンブルになります。
条件が絞れていない、準備もしていない状態なら、昇任を受けてから腰を据えて考えた方がいい。
そもそも「辞めたい理由がまだ整理できていない」という段階なら、先にこちらの記事から読んでみてください。


まとめ:自分の条件で決めたから、後悔していない
- 昇任や安定は確かに大事。でも、それだけを理由に進路の判断を止めなくていい
- 私は「4年でサイバー大学を卒業する」という動かせない条件で、昇任直前の退職を決めた
- 決断を支えたのは、1年以上前からの準備と「いつ動いてもいい状態」だった
昇任直前の退職は、誰にでも勧められる選択ではありません。
ただ、「もったいない」という周りの声だけで判断を止めてしまうのも、また違うと思っています。
自分の動かせない条件は何か。短期の損と長期の選択肢、どちらを取るのか。
そこを自分の頭で決めたなら、昇任を受けて残る選択も、昇任前に辞める選択も、どちらも正解にできます。
辞めた後の年収がどう動いたかは、別記事に時系列でまとめています。
















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