「若退金、上がるらしいですよ」
営内でこんな話を聞いたら、自分も受け取れるのか気になりますよね。
若年定年退職者給付金(以下、若退金)の引上げは、2026年7月3日に公布された改正法で決まりました。ただし、受給条件はかなりはっきりしています。
基本となる条件は、自衛官として通算20年以上在職し、定年等で退職することなんです。年齢だけで決まる制度ではなく、定年前に自分の意思で中途退職した人は対象になりません。
ここでは、20代の自衛官に向けて、若退金の対象者と改正内容、そして今からできる準備を一次資料に沿って整理します。
やまと僕は元陸上自衛官です。
車両整備の現場から民間へ移り、いまは地方中小の製造業(アルミダイカスト)でDX推進を担当しています。2026年9月の独立に向けて退職準備中です。自衛隊は3等陸曹のときに中途退職したため、僕も若退金を受け取っていません。
- 若退金の基本条件は通算20年以上の在職と、定年等による退職。定年前の自己都合退職は対象外
- 引上げの狙いは、再就職賃金と若退金を合わせた収入を退職時の給与水準に近づけること
- 改正法は2026年4月1日以後の退職者に適用。給付水準は2028年度まで3段階で上がる
- 20代の現役時点では受給条件を満たさない。将来の進路を考えるときの判断材料の1つとして見る
- 制度だけで残る・辞めるを決めず、どちらを選んでも役立つ準備を在職中から始める
まずは、誰が受け取れる制度なのかを確認します。
若退金の対象は年齢ではなく「通算20年以上+定年等退職」
まず支給条件を確認する
若退金は、一般より早く定年を迎える自衛官のための給付なんです。基本となる支給条件は、改正後も大きく変わりません。
自衛官として通算20年以上在職し、定年等で退職した人が対象です。
今回の改正では、在職期間の要件が「引き続いて20年以上」から「通算20年以上」へ広がりました。いったん退職し、再び採用された人も通算できるようにするためです。一方で、20年以上という期間と「定年等で退職する」という軸は残っています。
定年前の自己都合退職は対象にならない
20代の自衛官が確認しておきたいのは、ここなんです。
最終提言は、自らの意思で定年前に中途退職した人は対象外と整理しています。若年定年制によって退職するわけではないためです。
若退金は、退職した人への一律の慰労金ではありません。一般の公務員より早い定年によって生じる収入差を埋める制度なんです。だから、自己都合の中途退職とは分けて扱われます。
- 対象になる:自衛官として20年以上勤続し、定年等により退職した人
- 対象にならない:勤続20年に満たない人/自らの意思で定年前に中途退職した人
出典:防衛人事審議会処遇・給与部会「若年定年退職者給付金の給付水準の引上げ等に関する最終提言」(令和7年12月)
最終提言と、成立した改正法の概要は防衛省が公開しています。制度は個別条件で扱いが変わるため、最新情報は公式資料と所属の担当窓口で確認してください。
▶ 公式: 防衛省|若年定年退職者給付金の給付水準の引上げ等に関する最終提言(令和7年12月・PDF)
▶ 公式: 防衛省|防衛省設置法等の一部を改正する法律の概要(令和8年法律第53号・PDF)
若退金は「早い定年による収入減」を埋める制度
制度の出発点は、一般より早い定年にある
自衛官には、一般の公務員より早く退職する若年定年制があります。有事に備え、部隊の年齢構成を若く保つ必要があるためです。
その一方で、最終提言は若年定年制を「正社員の65歳定年制が定着しているわが国においては不利な雇用形態」と表現しています。早く退職する分、65歳までの収入をどうつなぐかが課題になります。
多くの自衛官は50歳代後半で定年を迎えます。一般の定年である65歳までに生じる収入差を埋めるため、1990年に若退金が作られました。今回の改正まで、給付水準の算定方法は30年以上ほぼ変わっていませんでした。
改正前は「退職時収入の約75%」を支える設計だった
改正前の給付水準は、定年年齢と60歳との差1年につき、退職時の俸給月額6か月分を基準にしていました。
若退金が退職時年収の3割強、再就職賃金が4割強。両方を合わせて、退職時年収の約75%を平均的に維持するという設計なんです。今回の引上げは、この差を縮めるために行われます。
つまり、若退金は早い定年による収入減を補うもので、退職理由を問わず受け取れる慰労金ではありません。ここを押さえると、対象者の条件が理解しやすくなります。
| 対象になる基本条件 | 対象にならない主なケース |
|---|---|
| 自衛官として通算20年以上在職 定年等により退職 若年定年による収入減を補う対象 | 通算20年に満たない 定年前に自己都合で中途退職 20代の現役時点ではまだ受給条件を満たさない |
改正で何が変わった?2026〜2028年度に3段階で引上げ
再就職後の総収入を、退職時の給与水準に近づける
改正の狙いは、平均的な再就職賃金を得た人について、再就職賃金と若退金を合わせた総収入を、退職時の基本的な給与水準に近づけることです。
改正前は約75%を支える設計でした。その差を2026年度から2028年度にかけて、3段階で縮めます。
ただし、誰でも一律に同じ金額が増えるわけではありません。実際の支給額は、階級・退職年齢・退職時期などで変わります。この記事では個別金額を推計しません。
2026年4月1日以後の退職者から、段階的に適用
改正法は2026年7月3日に公布され、給付水準の引上げは同年4月1日以後に退職した人へ適用されます。
2026年4月1日から2027年3月31日までに退職した対象者へ、1段階目の給付水準が適用されます。
2027年4月1日から2028年3月31日までの退職者は、さらに引き上げた2段階目の水準になります。
給付水準の引上げが完了し、再就職後の収入に応じた、いわゆる「就労活躍加算」も導入されます。
改正前のモデルケースで、制度の役割を見る
防衛省が2025年2月に示した改正前のモデルケースを見ると、若退金がどの時期の家計を支える制度なのかが分かります。
モデルは、2士で入隊し、曹長として56歳で定年を迎えるケースです。
| 時期 | 若退金 年額の目安 | 再就職賃金 年額の目安 |
|---|---|---|
| 〜60歳 | 約250万円 | 約310万円 |
| 〜65歳 | 約140万円 | 約230万円 |
※これは2025年2月時点の改正前モデルです。若退金と再就職賃金の合計は、60歳までが年約560万円、65歳までが年約370万円とされています。改正後の個別金額は、階級・退職年齢・退職時期によって変わります。
▶ 公式: 防衛省|防衛省・自衛隊に関する質問〜78 自衛官の処遇改善等について⑥(PDF)
このモデルから分かるのは、若退金だけで生活する制度ではないということなんです。定年後も再就職して働く前提で設計されています。
昇任の直前で辞めると決めたときに何を考えていたかは、別の記事に書いています。


受給条件を知ったあとに、考えておきたいこと
「20年残る」か「今すぐ辞める」かの二択にしない
受給条件を知ったからといって、20年残るのが正解とも、早く辞めるのが正解とも限りません。
選ぶ進路によって使える制度は変わります。ただ、若退金だけで進路を決める話でもありません。仕事内容、家族、収入、今後身につけたい力と並べて考える材料の1つです。
引上げの背景には、採用と定着の難しさがある
最終提言は、見直しの背景として、2023年度に応募者数・採用者数が大きく減り、中途退職者数が増えたことを挙げています。
この数字は、退職を勧める材料ではありません。国も採用と定着を課題として捉え、処遇を見直しているという背景なんです。残る人にとっても無関係な改正ではありません。
制度が支えるのは収入であって、次の仕事ではない
若退金は、再就職賃金と合わせて生活を支える制度です。収入の下支えにはなりますが、次の仕事そのものが決まるわけではありません。
定年まで残る場合でも、いつかは自衛隊の外で働く時期が来ます。在職中に経験や学びを積む意味は、受給対象かどうかでは変わりません。
20代の現役自衛官が、今からできること
若退金は、少なくとも通算20年以上在職した先の制度です。20代の今は、受給額よりも手元の選択肢を増やす準備に目を向けられます。
ここで挙げるのは、退職を前提にした準備ではありません。残っても辞めても役立つことに絞ります。
任期制なのか、曹に上がって定年まで行くルートなのか。定年年齢は階級によって違います。
自分の場合にどうなるかは、ネットの記事ではなく公式資料と、所属の担当窓口で確認してください。制度は変わりますし、個別の事情で結論も変わります。
若退金は長期の制度です。一方、3年後の進路に効くのは、今の担当業務や身につけた知識、資格などです。
長期の制度を確認しつつ、3年後に使える経験も積んでおく。両方を分けて考えると、目の前の行動を決めやすくなります。
僕は自衛隊にいたとき、勤務と並行して通信制大学で学びました。一気に進められたわけではありません。
あれもこれも始めると続きません。まずは1つだけ選び、勤務の波があっても続けられる形にします。
僕は退職を決めたあとも、目の前の隊務を雑にしないことは意識していました。
在職中の準備は、今の仕事を軽く扱うことではありません。隊務を続けながら、空いた時間で次の準備も進める。その積み重ねが、あとで選べる道を増やします。
在職中の準備を、もう少し具体的な手順に落とした記事はこちらです。


よくある質問
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進路や在職中の準備をもう少し考えたい人向けの記事です。






まとめ|若退金は進路を決める答えではなく、判断材料の1つ
若退金の引上げは、2026年7月3日に公布された改正法で決まりました。2026年4月1日以後の退職者から適用され、2028年度まで3段階で給付水準が上がります。
20代の現役時点では、まだ受給条件を満たしません。ただ、将来も対象外と決まったわけではありません。通算20年以上在職して定年等で退職するのか、途中で別の道へ進むのかで扱いが変わります。
- 基本条件は「通算20年以上の在職」と「定年等による退職」
- 給付水準は2026年度から2028年度まで3段階で引き上げられる
- 制度は進路を決める答えではないが、判断材料の1つにはなる
定年まで残る場合も、途中で別の道へ進む場合も、制度だけで準備が終わるわけではありません。在職中に積んだ経験や学びは、どちらの進路でも使えます。



まずは自分の受給条件を公式資料と担当窓口で確認する。
そのうえで、今の勤務を続けながら始められる準備を1つ選んでみてください。














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