「SESから自社開発に移るのは難しいよ」
エンジニアをやっていると、一度はこの言葉を聞きませんか。
客先常駐で他社のシステムを作り続けながら、
「このまま“人月で貸される側”でいいのかな」とふと思う。
その気持ち、すごく分かるんです。私も同じでした。
この記事は、SESで客先常駐しているエンジニアで、「そろそろ自社開発・内製の側に移りたい」と考えている人に向けたものです。
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とくに製造業の内製エンジニアという選択肢を、いいことも面倒なことも両方、実際に移った立場で書きます。
やまと私は工業高校から大手楽器メーカー、陸上自衛隊という“現場”を経て、未経験でSES企業に入りました。
客先常駐で、電力会社向けのシステム開発をしていた側です。
そこから今は、地方中小の製造業(アルミダイカスト)で、ひとりでDXを内製する側にいます。
- 製造業の内製エンジニアは、現場のすぐ隣で「発見→開発→運用」を一気通貫できる
- 反面、IT組織が小さく、相談相手が少ない。評価制度も整っていないことが多い
- SES経験者は「現場ヒアリング」と「業務理解」で強みを出しやすい
- だから技術より先に、会社の本気度と任される裁量を見て選ぶ
結論:内製化エンジニアは「一気通貫」できる。ただし「孤独」もセット
先に3行でまとめます。
- 製造業の内製エンジニアは、現場のすぐ隣で「発見→開発→運用」を一気通貫できる
- 反面、IT組織が小さく、相談相手が少ない。評価制度も整っていないことが多い
- だから選ぶときは、技術より先に「会社の本気度」と「任される裁量」を見たほうがいい
ここから、ひとつずつ実態をほどいていきます。
そもそも「内製化エンジニア」って何?SESと何が違うのか
SESは「人を貸す」、内製は「自社の課題を自分で解く」
ざっくり言うと、こうです。
SESは、自分のスキルと時間を、契約先の会社に提供する働き方。
作るのは「お客さんのシステム」なんですよね。
内製化エンジニアは、自分が所属する会社のなかで、その会社自身の業務課題を解く人。
作るのは「自分の会社のシステム」です。
製造業の「内製化」は、もともと外注に頼っていたシステム開発を、自社の中でやれるようにすることを指します。
国も「2025年の崖」やDXの文脈で、外注まかせから内製へ、という流れを後押ししています(※経済産業省のDX政策(産業界のDX)。制度の最新情報は公式サイトで必ず確認してください)。
いちばん大きな違いは「自分ごとになるかどうか」
技術的な違いより、私が大きいと思うのはここです。
SESだと、納品したら基本そこで関係が切れます。
そのシステムが現場で本当に使われているか、最後まで見届けにくい。
内製だと、作ったものを毎日となりで見ることになります。
使われていなければ、その理由を聞きにいける。直せる。
「作って終わり」じゃなく「使われるまで面倒を見る」のが内製なんです。
ここが、合う人にはたまらないし、合わない人にはしんどい。
そういう分かれ目になります。
「客先常駐しかやってないし、内製で通用するのかな」と思うかもしれません。
でも、SESで培ったものは、製造業の内製でそのまま武器になります。経験が無いんじゃなく、内製の言葉に翻訳していないだけなんです。
| SES・客先常駐での経験 | 製造業の内製でどう活きるか |
|---|---|
| 客先で要件をヒアリングして形にした | 現場の「困りごと」を見つけて課題にする力 |
| 業務に合わせてシステムを触った | 業務とITをつなぐ翻訳(内製の本質) |
| 納品後の保守・改修をやった | 「使われ続ける」運用まで見る視点 |
| 客先ごとに幅広い技術を触った | 内製での技術選定の引き出し |
| 客先・自社・営業の間を調整した | 現場・経営との合意形成 |
なお、製造業に限らず「客先常駐から社内SE全般へどう移るか」は、客先常駐から社内SE・社内DXへで3つのカギに整理しています。あわせてどうぞ。


製造業の内製エンジニアになるメリット
課題発見から実装・運用まで一気通貫できる
要件をもらって作るんじゃなくて、課題を見つけるところから関われます。
「この帳票、紙で転記してるの大変そうだな」と気づいて、自分で形にして、現場に置く。
この距離の近さは、外からは作れないんですよね。
現場の隣で作れるので、反応が速い
ユーザーが目の前にいます。
朝作ったものを昼に見てもらって、「ここ使いにくい」とその場で言われる。
フィードバックの往復が、とにかく速い。
受託やSESの「仕様確定→開発→検収」みたいな長い往復とは、テンポが違います。
「作って納めて終わり」じゃなく「使われて続く」
自分が作ったツールが、半年後も現場で動いている。
地味に聞こえるかもしれませんが、これがけっこう効くんです。
「誰かの作業が、ちょっと楽になった」が、目で見える。
モチベーションの源が、お金や評価とは別のところにできる感じ、と言えば近いかもしれません。
先に言う、デメリットと注意点
メリットだけ並べる記事は信用できないと思うので、先に弱点を出します。
- IT組織が小さい=相談相手がいない孤独
- 評価制度・キャリアパスが整っていないことが多い
- 何でも屋になりやすい(インフラもヘルプデスクも)
IT組織が小さい=相談相手がいない孤独
中小製造業だと、IT担当が自分ひとり、なんてことが普通にあります。
コードレビューしてくれる先輩もいない。詰まったとき、社内に聞ける人がいないんですよね。
SESやIT企業の「周りが全員エンジニア」とは、環境がまるで違います。
評価制度・キャリアパスが整っていないことが多い
IT職の評価軸が、そもそも会社にない場合があります。
「DXって何をどう評価すればいいの?」が、上司にも分からない。
等級表もキャリアパスも、製造現場向けにできていることが多いんです。
ここは入る前に確認しておかないと、あとでモヤモヤします。
何でも屋になりやすい(インフラもヘルプデスクも)
「パソコンに詳しい人」枠で、なんでも飛んできます。
プリンタが動かない、Wi-Fiが切れた、Excelが壊れた。
開発に集中したいのに、雑用で一日が終わる日もある。
逆に言うと、広く触れるのが好きな人には向いてます。ここも分かれ目です。
「技術スタックが古いんじゃ?」問題のリアル
SESから移るとき、いちばん不安なのがこれですよね。
「製造業のITって、古い言語と古いシステムなんじゃないの」と。
会社によってピンキリ。古い現場は本当にある
正直に言うと、古い会社はあります。
基幹システムが何十年も前のままだったり、Excelとマクロで全部回していたり。
ここは会社次第としか言えません。だから後半の「選考で見るポイント」が大事になります。
でも内製なら、自分で新しくできる余地がある



外注だと「今のシステムに合わせて」となりがちですが、内製なら自分が技術選定できるんです。
私の場合は、新しく作る部分はモダンな構成(PythonやFastAPI、フロントはNext.js)で組みました。
「会社が古い=自分も古い技術しか触れない」とは限らないんですよね。
ゼロから作る余地がある会社なら、むしろ自分の裁量で新しくできます。
年収・評価・キャリアパスの現実
年収は「上がるとは限らない」。役割と会社で動く
夢のない話もしておきます。
製造業に移ったから年収が上がる、とは限りません。むしろ、SESや受託のほうが単価が高いケースもあります。
肩書きより「裁量の大きさ」で見たほうがいい
中小だと「課長」「部長」みたいなきれいな階段がないこともあります。
でも、任される範囲=裁量はめちゃくちゃ大きいことが多い。
ひとりで企画から運用まで持てる、という経験は、肩書き以上に次につながります。
肩書きで選ぶより、「どこまで自分に任せてもらえるか」で見たほうがいいと思うんです。
SES客先常駐から、地方中小の製造業DXへ移った話
ここからは、私自身の話を少しだけ。
SESで感じていたこと(客先常駐の働き方)
私は未経験からSES企業に入って、客先常駐でエンジニアをしていました。
担当したのは、電力会社向けのWebポータルの開発やAPI基盤づくり。
Vue.js、Python、Java、AWSと、けっこう幅広く触らせてもらえました。
アジャイルもウォーターフォールも、両方のやり方を経験できたのはありがたかったです。
ただ、客先常駐ならではの「距離」も感じていて。
客先で作っているのは、あくまで「お客さんのシステム」です。
完成しても、自分のなかでは「これ、自分が作ったんです」と胸を張って言いきりにくい感じがありました。
「自社で作ったものが世に出る」「これ、うちで作ってるんですよ」と説明できるようになりたい。
そんな気持ちが、自分のなかにずっとありました。
地方の偶然の縁から、ひとり内製の話が来た
転機は、地元(静岡)での偶然の縁でした。
IT環境がまだ整っていない、地方の中小製造業(アルミダイカストの工場)から、相談を受けたんです。
「現場のデータがぜんぶ紙とExcelでバラバラで、なんとかしたい」と。
正直、迷いました。
それでも最後に背中を押したのは、大きく2つの気持ちでした。
ひとつは、当時は東京のIT企業にいたので、「地元に帰って仕事がしたい」という思いがあったこと。
もうひとつは、お客さんのシステムではなく、「自社で世に出るものを、自分の手で作りたい」という気持ちです。
最終的に、2024年の初めに、その会社のDX推進担当として移りました。
役職手当も付けてもらって、生活の拠点も静岡の地方都市に移しました。
入ってからやったこと(ゼロからのデータ基盤・内製MES)
入ってまず驚いたのは、本当にゼロからだったこと。
社内のシステム基盤を、いちから作るところからのスタートでした。
やったことを、ざっくり並べるとこんな感じです。
- 紙とExcelで散らばっていたデータを、入力できる形に整える(GoogleフォームとGASの連携、データ検証のしくみ)
- ダイカストマシンから、稼働データを直接抜けるようにする(メーカーと通信のやり取りを調整)
- 生産管理まわりのシステム(MES)を自分たちで内製で開発(Python/FastAPI/Next.js)
- IoTの導入、現場で見えるダッシュボードづくり、社内NASサーバーの整備
- 外注ベンダーへの発注・進行管理(発注側=PO的な役割)
やってみて、いちばん苦労したのは「言葉」でした。
現場の人に伝わる言葉と、伝わらない言葉がある。
専門用語をそのまま使っても通じないので、相手に伝わる言い方を選んで、置き換えながら会話する必要がありました。
技術の面では、早く作ろうとしすぎて、品質を後回しにしてしまったことがあります。
結局あとから修正に時間がかかってしまいました。
裁量が大きいぶん、自分しかできない=「止めてくれる人がいない」のも、ひとり内製ならではの難しさです。
それでも、現場の人から「今までのやり方より、こっちのほうが楽だわ」「助かるよ」と言ってもらえた時は、やっぱりうれしいものです。
ひとつ言えるのは、SESで現場ヒアリングや業務理解をやってきた経験が、ここで効いたことです。
「現場の人が何に困ってるか」を聞き出して、形にする。
コードを書く力そのものより、この“翻訳”の部分でSES経験が活きた気がしています。
内製で「最初に何をやるか」の具体は、製造業DX担当が未経験から最初にやった「作業の言語化」に書いています。


向いている人・向いていない人(判断表)
体験だけだと「で、自分はどうなの」が残ると思うので、判断軸に落とします。
| 向いている人 | 向いていない人 | |
|---|---|---|
| 仕事の好み | 課題発見から運用まで広く持ちたい | 役割をしぼって専門を深めたい |
| 環境 | ひとりでも自走できる/孤独に強い | チームで相談しながら進めたい |
| 技術 | 自分で技術選定したい・広く触りたい | 整った開発環境・レビュー文化が欲しい |
| 評価 | 裁量や手応えで満たされる | 明確な等級・評価制度がないと不安 |
| 現場 | 現場の人と話すのが苦じゃない | 人と調整するより開発に集中したい |
どっちが上とか下とかじゃないです。
「自分はどっち寄りかな」を考えるためのものだと思ってください。
選考で見るべきポイント(チェックリスト)
「古い会社・しんどい会社」を避けるために、面接や見学で確認したいことです。
- IT担当は今、何人いるか(ゼロ=完全ひとりか、先輩がいるか)
- 新しく作る裁量があるか(技術選定を任せてもらえるか)
- 経営がDXに本気か(社長・役員がどこまで関与しているか、予算がつくか)
- IT職の評価軸があるか(なければ「これから作る」と言ってくれるか)
- 何でも屋になる範囲(ヘルプデスクや雑務がどれくらい乗ってくるか)
- 現場との関係(IT担当が現場から歓迎されているか)
ぜんぶ完璧な会社はたぶんありません。
「どこは妥協できて、どこは絶対ゆずれないか」を、自分の中で先に決めておくのが大事なんです。
まとめ:肩書きより「自分ごとにできるか」で選ぶ
長くなったので、最後にまとめます。
- 製造業の内製エンジニアは、現場のとなりで一気通貫できるのが魅力
- でも、孤独だし、評価もキャリアパスも整っていないことが多い
- 技術スタックは会社次第。内製なら自分で新しくできる余地がある
- 年収は上がるとは限らない。だから肩書きより「裁量」で見る
- SES経験は「現場ヒアリング・業務理解」で内製の武器になる
「SESから自社開発は無理」と最初から閉じなくていいと思うんです。
少なくとも私は、未経験のIT入口からでも、製造業の内製にたどり着けました。
合うかどうかは人それぞれ。だからこそ、向き・不向きを先に確かめてほしいんです。
あなたが「作って終わり」じゃなく「使われるまで見届けたい」タイプなら、この働き方は一度のぞいてみる価値があるかもしれません。
\ 客先常駐を抜けて社内SEへ /
※社内SE・自社開発・情シスの求人に特化した転職エージェント。登録・相談無料。
よくある質問(FAQ)
- SESから自社開発・内製への転職は本当に難しいですか?
-
「難しい」と言われがちですが、不可能ではありません。特に中小製造業の内製は、純粋なコード力より「現場の業務を理解して翻訳する力」が効きます。SESで現場ヒアリングをしてきた人は、むしろ強みを出しやすい領域です。
- 製造業のIT部門は技術スタックが古いですか?
-
会社によってピンキリです。古い基幹システムのままの会社もあれば、内製でモダンな構成(例:Python・FastAPI・Next.js)を新規に組める会社もあります。応募時に「新しく作る裁量があるか」を確認するのが大事です。
- 年収は上がりますか?
-
上がるとは限りません。SESや受託のほうが単価が高い場合もあります。中小製造業では年収より「裁量の大きさ」「一気通貫の経験」が得られると考えたほうが現実的です。役職手当などで動く余地はあります。
- IT担当が自分ひとりだと、スキルは伸びませんか?
-
相談相手がいない孤独はあります。ただ、企画から運用まで全部ひとりで持つので、「広く深く触る」経験は積めます。社外の勉強会やオンラインコミュニティで“縦の相談相手”を作ると、孤独はかなり和らぎます。
- 未経験・異業種からでも内製化エンジニアになれますか?
-
なれます。私自身、異業種のIT入口(未経験SES)から、製造業の内製DX担当にたどり着きました。ただし「向き・不向き」は分かれます。本文の判断表で、自分がどちら寄りかを先に確認してみてください。
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