最終更新: 2025年12月3日
記事タイプ: ニュース解説・制度解説
2025年12月1日、政府・与党が18歳未満の子どもを対象とした新たな少額投資非課税制度「こどもNISA」を創設する方針を固めたことが報じられました。
2023年に廃止されたジュニアNISAの課題を解消し、0歳から非課税で積立投資ができる新制度として注目を集めています。
この記事では、こどもNISAの制度概要から、旧ジュニアNISAとの違い、メリット・デメリット、そして格差拡大への懸念まで、公的機関の情報をもとに詳しく解説します。
- こどもNISAの制度概要(対象年齢・投資枠・引き出し条件)
- 旧ジュニアNISAとの違い
- こどもNISAのメリットと注意点
- 制度開始までのスケジュール
- よくある質問への回答
注意: 本記事の内容は2025年12月3日時点の検討段階の情報です。正式な制度内容は2025年12月の税制改正大綱で決定される予定です。
1. こどもNISAとは?2025年12月発表の最新情報
1-1. 政府・与党が創設を決定(2025年12月1日)
こどもNISAとは、18歳未満の子どもを対象とした少額投資非課税制度です。
2025年12月1日、時事通信は「政府・与党が18歳未満に対象を広げる『こどもNISA』制度を創設する方向で調整している」と報じました(時事通信)。
この制度は、2024年1月から始まった新NISAの「つみたて投資枠」の対象年齢を引き下げるもので、以下の特徴があります。
- 子ども名義で口座を開設できる
- 親や祖父母の贈与資金で運用可能
- 進学や新生活に必要な資金の準備を想定
- 12歳以降にお金を引き出せるようにする案を検討
月内に決定する2026年度税制改正大綱に盛り込むことを目指し、与党の税制調査会で詳細を詰めています。
1-2. こどもNISAの制度概要(検討中の内容)
金融庁は2025年8月に令和8年度(2026年度)税制改正要望を提出しており、こども家庭庁と共同でNISAの未成年者向け拡大を求めています(金融庁)。
また、2025年11月20日には岸田文雄元首相が会長を務める「資産運用立国議員連盟」が高市首相に対し、NISAの年齢制限撤廃を正式に提言しました(日本経済新聞)。
これらの動きを受けて、こどもNISAの制度設計が進められています。
2. こどもNISAの5つの特徴
現時点で検討されているこどもNISAの主な特徴は以下の5つです。
2-1. 0歳から口座開設可能
こどもNISAは0歳から17歳までの子どもが対象です。
出生届が受理され、マイナンバーが発行されていれば、生後すぐに口座開設が可能になる見込みです。口座の開設・管理は親権者が行います。
ポイント:
- マイナンバーカードは必須ではなく、通知カードでも可能(予定)
- 親権者が子ども名義の口座を管理
- 18歳になると本人管理に移行
2-2. つみたて投資枠のみ(年間120万円)
投資できるのはつみたて投資枠のみで、年間120万円が上限です。
新NISAの「成長投資枠」(年間240万円、個別株など)は対象外となる見込みです。これは、長期・分散・積立の原則に基づいた安定的な資産形成を促す狙いがあります。
投資対象:
- 金融庁が定める基準を満たした投資信託
- ETF(上場投資信託)
- 個別株は対象外
2-3. 累計投資上限600万円
累計の投資上限額は600万円(検討中)とされています。
年間120万円の枠を使うと、5年間で上限に達する計算です。旧ジュニアNISAの累計上限400万円(年80万円×5年)と比較すると、200万円増額されています。
| 制度 | 年間上限 | 累計上限 |
|---|---|---|
| こどもNISA(検討中) | 120万円 | 600万円 |
| 旧ジュニアNISA | 80万円 | 400万円 |
2-4. 非課税期間は無期限
こどもNISAの非課税期間は無期限です。
旧ジュニアNISAでは5年間という制限があり、5年経過後はロールオーバー(移管)の手続きが必要でした。こどもNISAではこの制限がなくなり、18歳になって成人NISA口座に移管するまで、非課税で運用を継続できます。
つまり、0歳から始めれば最長18年間の長期投資が可能です。
2-5. 12歳以降に引き出し可能
こどもNISAでは12歳以降に売却・引き出しが可能になる方向で検討されています。
旧ジュニアNISAでは、原則として18歳になるまで引き出しができませんでした。途中で引き出すと、通常通りの課税がされるというペナルティがあったため、「使いづらい」という声が多く寄せられていました。
こどもNISAでは、中学進学(12歳)以降であれば柔軟に資金を活用できるよう改善されています。
活用シーン例:
- 中学校の入学費用(12歳〜)
- 高校の入学費用・留学費用(15歳〜)
- 大学の入学費用・一人暮らし費用(18歳〜)
3. 旧ジュニアNISAとの違い【比較表】
3-1. 改善された3つのポイント
こどもNISAと旧ジュニアNISAの違いを比較表でまとめました。
| 項目 | こどもNISA(検討中) | 旧ジュニアNISA |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0歳〜17歳 | 0歳〜19歳 |
| 年間投資上限 | 120万円 | 80万円 |
| 累計投資上限 | 600万円 | 400万円 |
| 非課税期間 | 無期限 | 5年間 |
| 投資対象 | つみたて投資枠のみ | 株式・投資信託等 |
| 引き出し | 12歳以降可能 | 原則18歳まで不可 |
| 制度期間 | 恒久化(予定) | 2023年で新規終了 |
主な改善点:
- 引き出し年齢の緩和:18歳→12歳に引き下げ
- 非課税期間の無期限化:5年→無期限に
- 投資枠の拡大:年80万円→120万円に
3-2. ジュニアNISAが不人気だった理由
旧ジュニアNISAは2016年に開始されましたが、利用実績が低迷し、2023年で新規口座開設が終了しました。
ITmediaの報道によると、2022年の累計口座数は約95万程度で、一般NISAやつみたてNISAが2,000万超の口座数を誇る中、「ジュニアNISAの存在感は終始かすんでいた」とされています(ITmedia)。
不人気だった主な理由:
- 18歳まで引き出し不可
- 急な出費に対応できない
- 途中引き出しにペナルティ
- 非課税期間が5年間のみ
- 長期投資のメリットを活かしにくい
- ロールオーバー手続きが煩雑
- 制度が複雑
- 払い出し制限のルールが分かりにくい
- 一般NISAとの違いが理解しにくい
こどもNISAでは、これらの課題が解消されることが期待されています。
4. こどもNISAのメリット
4-1. 最長18年の長期投資で複利効果
こどもNISAの最大のメリットは、0歳から始めれば最長18年間の長期投資が可能なことです。
長期投資では「複利効果」により、運用益が雪だるま式に増えていきます。非課税期間が無期限のこどもNISAでは、この複利効果を最大限に活用できます。
シミュレーション例:
月5万円(年60万円)を0歳から18歳まで積み立てた場合:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 元本(18年間) | 1,080万円 |
| 運用益(利回り5%の場合) | 約620万円 |
| 合計 | 約1,700万円 |
通常なら運用益620万円に対して約20%(約124万円)の税金がかかりますが、NISAなら非課税です。
4-2. 教育資金の準備に活用できる
こどもNISAは、子どもの教育資金を準備する有効な手段として活用できます。
12歳以降に引き出しが可能になるため、以下のようなライフイベントに合わせて柔軟に資金を活用できます。
- 中学進学(12歳〜):私立中学の入学金、制服代
- 高校進学(15歳〜):入学金、部活動費、留学費用
- 大学進学(18歳〜):入学金、授業料、一人暮らし費用
文部科学省の調査によると、大学4年間の平均費用は国公立で約500万円、私立で約700万円以上かかるとされています。こどもNISAで早めに準備を始めることで、教育費の負担を軽減できます。
4-3. 家族全体で年480万円の非課税枠
こどもNISAを活用すると、家族全体での非課税投資枠が拡大します。
| 口座種別 | 年間投資上限 |
|---|---|
| 親名義の新NISA(つみたて投資枠) | 120万円 |
| 親名義の新NISA(成長投資枠) | 240万円 |
| 子ども名義のこどもNISA | 120万円 |
| 合計 | 480万円 |
夫婦それぞれが新NISAを利用し、子ども1人がこどもNISAを利用すれば、家族全体で年間840万円の非課税枠を活用できます。
5. こどもNISAの注意点・懸念
こどもNISAには多くのメリットがありますが、批判的な意見や注意点も存在します。
5-1. 格差拡大への批判
こどもNISAに対しては、「富裕層優遇ではないか」という批判があります。
年間120万円の投資枠を満額使えるのは、投資に回す余裕のある家庭に限られます。経済的に厳しい家庭では活用が難しく、結果として資産格差が拡大するという懸念です。
この批判に配慮し、こどもNISAでは「つみたて投資枠のみ」に限定することで、投機的な運用を抑制する方向で検討されています。
5-2. 少子化対策としての疑問
こどもNISAは「子育て支援」「少子化対策」の文脈で語られることがありますが、「資産形成支援が出生数増加につながるか疑問」という指摘もあります。
批判的な意見としては:
- 「少子化対策というにはこじつけに過ぎない」
- 「教育費の無償化や子育て支援の充実が先ではないか」
- 「義務教育すら完全に無償化されていない現状で優先順位が違う」
一方で、子育て世代の資産形成を支援し、教育資金への不安を軽減することで、間接的に少子化対策につながるという見方もあります。
5-3. 制度確定までの注意点
現時点(2025年12月3日)では、こどもNISAはまだ「検討段階」です。
2025年12月の税制改正大綱で正式決定される見込みですが、詳細な制度設計は変更される可能性があります。
注意すべきポイント:
- 要望がそのまま通るとは限らない
- 引き出し年齢(12歳)や投資上限額は変更の可能性あり
- 制度開始時期が延期される可能性もゼロではない
正式な情報は、金融庁や各証券会社の公式発表を確認してください。
6. 今後のスケジュールと開始時期
6-1. 2025年12月:税制改正大綱決定
こどもNISAの制度詳細は、2025年12月中旬に決定される税制改正大綱に盛り込まれる予定です。
与党の税制調査会で詳細な制度設計が議論され、最終的な投資上限額や引き出し条件などが確定します。
6-2. 2026年度:制度開始予定
税制改正大綱の内容をもとに、2026年1月から3月にかけて通常国会で税制改正法案が審議されます。
法案が成立すれば、2026年度中にこどもNISAが開始される見込みです。
| 時期 | イベント |
|---|---|
| 2025年12月 | 与党税制調査会で詳細決定 |
| 2025年12月中旬 | 2026年度税制改正大綱決定 |
| 2026年1月〜3月 | 通常国会で税制改正法案審議 |
| 2026年度中 | 制度開始(予定) |
具体的な開始日は、税制改正大綱の発表後に明らかになります。
7. よくある質問(FAQ)
Q1: こどもNISAはいつから始まる?
A: 2026年度からの開始が予定されています。正式な制度内容と開始日は、2025年12月の税制改正大綱で決定される見込みです。
Q2: 誰が口座を管理する?
A: 親権者が子ども名義の口座を開設し、運用を管理します。子どもが18歳になると、本人管理に移行し、成人向け新NISAの口座として継続利用できます。
Q3: 引き出しはいつからできる?
A: 12歳以降に売却・引き出しが可能になる方向で検討されています。旧ジュニアNISAでは原則18歳まで引き出しができなかったため、大幅な改善となります。
Q4: 既存のジュニアNISA口座はどうなる?
A: ジュニアNISAは2023年で新規口座開設が終了しています。既存のジュニアNISA口座は、18歳になるまで非課税での運用を継続できます。こどもNISAとは別制度のため、自動的に移行されるわけではありません。
Q5: 学資保険とどちらがいい?
A: 学資保険は元本保証があり、親に万が一のことがあっても保険金が支払われるメリットがあります。一方、利率は低い傾向です。
こどもNISAは元本保証はありませんが、長期投資で高いリターンが期待できます。また、非課税で運用できるメリットがあります。
どちらが良いかは、リスク許容度や家計の状況によります。両方を併用するという選択肢もあります。
Q6: 贈与税はかかる?
A: 親や祖父母から子どもへの贈与は、年間110万円までは非課税(暦年贈与)です。こどもNISAの年間投資上限120万円は110万円を超えるため、贈与税の取り扱いについては今後の制度詳細を確認する必要があります。
8. まとめ
この記事では、2026年度に開始予定の「こどもNISA」について解説しました。
こどもNISAの5つの特徴:
- 0歳から口座開設可能:マイナンバー発行後すぐに開設できる
- つみたて投資枠のみ(年間120万円):長期・分散・積立の原則
- 累計投資上限600万円:旧ジュニアNISAの400万円から増額
- 非課税期間は無期限:最長18年間の長期投資が可能
- 12歳以降に引き出し可能:柔軟な資金活用が可能
旧ジュニアNISAの課題(18歳まで引き出し不可、非課税期間5年など)が解消され、より使いやすい制度になることが期待されています。
一方で、格差拡大への懸念や、少子化対策としての効果への疑問など、批判的な意見も存在します。
重要: 本記事の内容は2025年12月3日時点の検討段階の情報です。正式な制度内容は2025年12月の税制改正大綱で決定される予定ですので、最新情報は金融庁や各証券会社の公式発表をご確認ください。
こどもNISAの開始に備えて、今から情報収集を始めておくことをおすすめします。


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